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あらためて知る、ワシントン州とシアトル市の姉妹都市

ワシントン州の姉妹都市特集

ワシントン州とオレゴン州では、日本の多くの自治体と姉妹都市・友好都市提携を結んでいる市や郡があります。こうした関係は長年にわたり市民レベルの交流を通じて育まれ、草の根の国際交流を支えてきました。今回は日米間の姉妹都市の取り組みに焦点を当て、これまでの歴史や活動を振り返ります。
(ライトハウス 2026年6月号 特集「あらためて知る、ワシントン州オレゴン州の姉妹都市 〜コミュニティーに根ざす交流の今〜」より、シアトル市、ワシントン州の記事を抜粋)

兵庫県 神戸市 × シアトル市|70年で大きく広がった草の根

1955年にミネソタ州セントポール市が長崎市と姉妹都市提携を結ぶと、アメリカで多くの都市が姉妹都市提携を結び始めました。そんな黎明期の1957年に姉妹都市となったのがシアトル市と神戸市です。シアトルにある神戸シアトルビジネスオフィスと神戸市の国際交流の担当者にお話を伺いました。

シアトル・神戸の姉妹都市提携文書
1957年に交わされた姉妹都市提携文書。

トーテムポールで始まった文化交流

1867年、アメリカは神戸に領事館を設立。神戸港が国際貿易港として開港する前年のことです。戦時中の中断はあったものの、1987年まで神戸にはアメリカ領事館があり、56年に当時の神戸の駐在広報官から「神戸市とシアトルで長期の都市提携を結んではどうか」と提言がありました。世界的港湾都市であること、海を見下ろす丘に街が広がり、美術館や美しい公園など街に多くの共通点があることなどが理由です。

姉妹都市提携の話が出た翌年の1957年、神戸市役所庁舎が落成。それを記念してトーテムポールを寄贈したいとシアトルから打診があり、その後正式に姉妹都市締結の署名が交わされました。トーテムポールは1961年に市庁舎敷地内の花時計の隣に設置され、翌1962年のシアトル万博では、神戸市がKobe Bellをシアトル市に寄贈しています。

姉妹都市提携初期、神戸市では、高校生の写真や、市内の様子をカラーフィルムに収めてシアトルに送りました。また、1958年には神戸市の高校生と教師がシアトルを訪問。現在は神戸市教育委員会が教育交流を担い、市の高校も個別でさまざまな交流をしています。

シアトル・センターのKobe Bell
シアトルセンター内、McCaw Hallのすぐ近くにあるKobe Bell。
シアトルからトーテムポールが寄贈
シアトルからトーテムポールが寄贈
1961年、シアトルからトーテムポールが寄贈され、除幕式が行われました。

市民レベルの交流が強み 

トーテムポールとKobe Bellの後もさまざまな物品交流が続き、例えば神戸市の動物園にはヤマアラシやボブキャット、水族館にはラッコやチョウザメ、森林公園にはセコイヤが寄贈されるなど、シアトルからさまざまな贈り物がありました。一方神戸からも同様に、インドガンや錦鯉などを寄贈といった交流もあったようです。さらに、シアトル美術館と神戸市内の美術館で、互いの地元作家の展示も行われてきました。

こうした一部の交流は神戸市が把握しているものの、実際は「数えきれないほどの交流がある」と話すのが、神戸市国際課の仲宗根さんです。仲宗根さんは「交流活動は神戸市民の間で熱心に行われ、神戸・シアトル姉妹都市協会、YMCA、ヨットクラブ、地元のライオンズクラブや青年会議所など、さまざまな団体が独自に活動をしています」と話します。

また、文化面では他に、神戸で開催される「神戸新開地ジャズヴォーカルクィーンコンテスト」の最優秀賞受賞者は、毎年秋にシアトル市内のクラブでライブを行うことが慣例となっています。逆にシアトルのコンペで優勝したシンガーも神戸に招待されています。また、昨年には在シアトル領事館の尽力もあり、ヴィッセル神戸とサウンダーズFCがパートナーシップを結んでいます。

そして、忘れてはならないのが1995年の阪神淡路大震災です。シアトル側からさまざまな支援があり、中でも震災のあった年の8月に開催された「神戸ーシアトル・キッズ・キャンプ」では、被災した児童45名がシアトルに招待され、シアトル市民が子どもたちの心の傷を癒やしてくれたと市の記録に残っています。現在、シアトル側で活動を行うシアトル・神戸姉妹都市協会の中心人物であるカーリンさんは、JETプログラムで神戸に滞在していた1995年に阪神淡路大震災で被災し、海外からのレスキュー隊や復興支援者の通訳として活躍。現在は、シアトルと神戸をつなぐ橋渡し役を務めています。

神戸シアトルビジネスオフィスの丸喜さんはこうした現状を「神戸でもシアトルでも、さまざまな団体が独立して、それぞれの持ち場で活動をしています。市が旗振りするだけではなく、民間レベルで真の草の根活動ができているのが神戸とシアトルらしいと思っています。行政も民間も、多方面かつ複合的につながっているのが私たちの関係の強みです」と補足してくれました。

ビジネス・学術分野での交流

ビジネス面にも目を向けてみましょう。シアトルにある神戸シアトルビジネスオフィスでは、大小問わず神戸の企業のアメリカ進出や、アメリカの企業が日本で事業拡大する際のサポート、大学同士または大学と企業、研究機関と企業など、神戸とシアトルを含めた北米都市の経済圏をつなぐ活動をしています。

2023年には、Microsoftが神戸にMicrosoft AI Co-Innovation Lab KOBEを設立。さらに2026年、ワシントン大学と神戸大学は、教育・研究・イノベーション分野での連携を強化することで合意しました。今後は両大学の学生の交流が活発になっていく予定で、こうした背景には、同オフィスのサポートがありました。また、神戸港とシアトル港は姉妹港提携を結んでいます。

再びのトーテムポール

さて、姉妹都市の始まりとともに神戸にやってきたトーテムポールですが、設置から50年以上経って腐食し、倒壊の危険があるとして撤去されることになりました。シアトル側よりネイティブアメリカンがトーテムポールの魂を抜く儀式をしてから土に返さなければならないという話が出たため、儀式を執り行うことに。現在は神戸市立森林植物園に移設してトーテムポールを土に返しているところです。そして姉妹都市65周年を迎えた2022年、シアトル市から2代目の寄贈が発表され、2024年に「命を吹き込む式典」を経て設置されました。2代目はコースト・セイリッシュ族の呼び方に合わせ、ストーリーポールと呼ばれています。

これまでの両市の関係について、丸喜さんは「神戸市とシアトル市の姉妹都市の関係はシアトルでもよく知られており、こちらでの我々の活動を大きく後押ししてくれます。これは約70年の歴史の中で先人の皆さまが積み重ねてこられた取り組みの結果に成り立っているものだと感じております。行政だけの関係ではなく、市民に根差した多岐にわたる我々の交流は私たちの誇るべきものです。我々はこの交流をさらに積み重ね、両市の持続可能な発展を目指したいと考えております」と総括してくれました。来年には姉妹都市提携70周年を迎え、多くのイベントが行われる予定です。

トーテムポール
2024年、新しくシアトルから神戸市に寄贈された2代目ストーリーポール。除幕式にはブルース・ハレル市長(当時・左から5番目)も出席した。
Photo Credit: Brian Chu Photography

取材協力


神戸シアトルビジネスオフィス 所長 丸喜健史さん

神戸シアトルビジネスオフィス 所長
丸喜健史さん
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神戸市国際課 課長(交流推進担当) 仲宗根晶子さん

神戸市国際課 課長(交流推進担当)
仲宗根晶子さん
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【キーワード】People-to-People Program

冷戦真っただ中の1956年、第34代アイゼンハワー大統領は一般市民同士の交流があれば戦争が起きにくくなると考え「People-to-People Program」を設立しました。これは一般市民や民間主導でスポーツや芸術、学問や教育、医療などさまざまな分野で交流することを後押しするもので、ここから発展したものが自治体同士がつながる姉妹都市制度です。1950年代後半から60年代にかけてアメリカ国内で多くの姉妹都市関係が結ばれたのにはこのような背景があります。片や日本では観光目的での海外渡航は64年まで制限されていました。当時の日本人にとって姉妹都市という仕組みは一般人が外国の文化に触れられる貴重な機会だったのです。

兵庫県 × ワシントン州|文化の垣根を越え、ビジネスのパートナーへ

シアトル市と神戸市の姉妹提携の縁もあり、姉妹県州になったのが兵庫県とワシントン州です。ワシントン州の郡・市は兵庫県内11の市・町と姉妹都市関係を結んでおり、兵庫県ワシントン州事務所ではその支援の役割も担っています。ワシントン州との姉妹県州を機に、アメリカで積極的に活動を行っている兵庫県の担当者にお話を伺いました。

兵庫県・ワシントン州の姉妹提携の書面
姉妹提携を結んだ時の書面。

姉妹県州のはじまり

兵庫県とワシントン州の姉妹都市提携は、1963年、当時の神戸アメリカ文化センター館長マイケル・D・ブラウン氏から「州と県の提携をしては」と話が出たのが始まりです。People-to-People Program(前ページ参照)を機にアメリカ側が世界各国の都市に積極的に姉妹都市提携を持ちかけていた時代のことでした。共に国際的な港を持ち、工業・農業・漁業など産業構造が似ているなど共通点が多く、また、すでに神戸市とシアトル市(1957年)、西宮市とスポケーン市(1961年)が姉妹都市だったことも後押しとなりました。この提言を兵庫県もワシントン州も快諾。同年、ワシントン州知事が来日した際、兵庫県知事と姉妹提携の調印を交わしました。

こうした背景もあり、その後、兵庫県の市・町とワシントン州内の郡・市は次々と姉妹都市提携を結びました。90年には両者の交流をさらに深めるべく、兵庫県が兵庫県ワシントン州事務所を設立。1990年代以降は同事務所の仲介サポートもあり、三田市とキティタス郡をはじめ、さらに姉妹都市の数が増え、現在、兵庫県内11の市・町とワシントン州内13の郡・市が姉妹都市関係にあります。兵庫県内の市町は世界各国さまざまな都市との姉妹・友好提携を結んでいますが、件数では対ワシントン州がトップです。

1963年(昭和38年)10月22日、ワシントン州と兵庫県の姉妹提携の様子
1963年(昭和38年)10月22日、ワシントン州と兵庫県の姉妹提携の様子
1963年(昭和38年)10月22日、姉妹提携が締結されました。ロゼリーニ知事が日米知事会議出席のため来日し、併せて兵庫県を訪問。金井知事と署名を交わしました。

事務所の役割と教育交流

兵庫県ワシントン州事務所の現在の業務の分野は経済、観光、教育など多岐にわたりますが、まず大前提として姉妹都市関係のサポート業務があります。同事務所では、兵庫県内の市・町とワシントン州内の郡・市の橋渡し役を担ってきました。

例えば、アメリカとの姉妹都市交流では、中高生による青少年交流が主軸になっている市・町が多くあり、同事務所は兵庫県側の市・町とワシントン州側の郡・市の調整、兵庫県からの訪問団のシアトル市内視察同行、現地事情のプレゼンなどの支援を行っています。また、コロナ禍などにより、姉妹都市との連絡が途絶えてしまったものの、同事務所の仲介により、交流が再開した事例もあります。その他、市長たちによる訪問団の活動も支援しています。

また、教育分野では、県内学校のアメリカでの学校交流先の紹介、日本語スピーチコンテストのサポート、兵庫県の伝統工芸品である播州そろばんの現地学校でのPR活動などを行ってきました。そして、長く続いているプログラムが教員の派遣です。兵庫県立高校の教員が、毎年、州内の高校などで日本語指導助手を1年間務めています。さらに、同事務所は神戸大学および兵庫県立大学のリエゾンオフィスとしての機能も果たしています。

経済・観光、広がる活動

設立当初は文化交流や教育交流がメインだった兵庫県ワシントン州事務所ですが、近年は、兵庫県の経済活性化に寄与すべく、県産品のアメリカでの販路拡大にも力を入れています。兵庫県の日本酒生産量は日本一。県内66の酒蔵のうち約20蔵がすでにアメリカ市場に進出(同事務所調べ)していますが、同事務所はイベントで試飲を行うなどして、兵庫の酒をPRしています。さらに、最近力を入れているのが線香です。淡路島は全国50%以上の線香の生産量を誇ります。ホームフレグランスを含めたウェルネス商品が定着しているアメリカ市場での販路拡大を狙っているところです。

また、経済交流ではワシントン州商務省とも連携しています。同省は毎年ITや航空といったテーマを定めたビジネスミッションを日本に派遣しており、県内企業とのマッチングなどの支援を行うことも大事な業務の一つとなっています。さらに、同省主催のAI Meetupでは、シアトル近郊のスタートアップ企業に対し、毎年兵庫県への進出に向けたPRを行っています。なお、市町レベルも含めた長年の交流の影響もあってか、兵庫県内にはCostcoが2店舗、Amazonの西日本最大の物流拠点、Microsoft AI Co-Innovation Labといったワシントン州企業が進出しています。

そして昨今、大きな比重を占めているのが観光PRです。昨年開催された大阪・関西万博を契機に兵庫県へアメリカからの観光客を誘致するのも大きなミッションでした。観光客誘致では積極的にアメリカ国内のイベントに参加。県産品のPRも含め、ワシントン州を軸足にしながらも、活動範囲は全米にわたっています。

兵庫の酒の試飲イベント
和食レストランで実施した兵庫の酒の試飲イベントは大盛況。
兵庫県公式マスコット「はばタン」
JCCCWのこどもの日イベントでは兵庫県公式マスコット「はばタン」も登場しました。
Sakura-Conで兵庫県への観光PR
Sakura-Conに集まるアニメファンたちへは、兵庫県への観光PRを行いました。

これからの活動

兵庫県とワシントン州の関係は、時代と共に少しずつ移ろい、一般的に姉妹都市と聞いて思い浮かぶような青少年交流や文化紹介にとどまらず、今では互いに大事なビジネスパートナー、日米のビジネスの最前線をリードする役割も果たしています。この約60年の歩みを、兵庫県ワシントン州事務所で所長を務める池上さんはこのように振り返ります。「姉妹都市交流が広がったきっかけは、1956年のPeople-to-People Programと言われています。第二次世界大戦でヨーロッパ戦線の最高司令官も務めたアイゼンハワー大統領は、悲惨な戦争を繰り返さないために、相互理解を深めて平和を築くことが不可欠だと考え、都市間の交流を含むこのプログラムを提唱したとのことです。その流れで、兵庫県とワシントン州は姉妹提携を行い、1990年に当事務所が設置されたため、当初の活動は文化紹介や市民・教育交流がメインだったようです。その後、バブル崩壊などによる日本経済の低迷もあり、全国的に自治体の海外事務所にも経済面での貢献が重視されるようになり、当事務所も経済や観光等に活動を広げてきました。両県州の交流については、周年事業などでの訪問団の相互派遣や各分野の事業を通じ、時間をかけて少しずつ関係を深めてきました。日本への関心が高まる今、ワシントン州をはじめとしたアメリカの皆さまに、兵庫県訪問や県産品に触れる機会を持っていただければ幸いです」。

兵庫県は、2027年3月でシアトルにある兵庫県ワシントン州事務所を閉鎖し、今後は別の形でワシントン州との交流を続けます。時代と共に変わってきた兵庫県とワシントン州の関係は、さらに新たなストーリーが始まりそうです。

ワシントン州商務省主催のAI Meetup
ワシントン州商務省主催のAI Meetupでは、兵庫県へ進出するメリットをプレゼン。

取材協力


兵庫県ワシントン州事務所 所長 池上卓久さん

兵庫県ワシントン州事務所 所長
池上卓久さん
ウェブサイト

ワシントン州と姉妹・友好都市関係にある地域

州内の市や郡×日本の市や町(提携年)

  • Washington State × 兵庫県(1963)
  • Seattle × 兵庫県神戸市(1957)
  • Bellingham × 千葉県館山市(1958)
  • Tacoma × 福岡県北九州市(1959)
  • Spokane × 兵庫県西宮市(1961)
  • Everett × 山口県岩国市(1962)
  • Auburn × 兵庫県丹波市(旧春日町)(1968)
  • Kent × 兵庫県丹波市(旧柏原町)(1968)
  • Renton × 兵庫県西脇市(1969)
  • Bellevue × 大阪府八尾市(1969)
  • Bremerton × 広島県呉市(1970)
  • Wenatchee × 青森県黒石市(1971)
  • Yakima × 青森県板柳町(1972)
  • Walla Walla × 兵庫県丹波篠山市(旧篠山町)(1972)
  • Tukwila × 徳島県三好市(旧井川町)(1979)
  • Olympia × 兵庫県加東市(旧社町)(1981)
  • Moses Lake × 山形県米沢市(1981)
  • Camas × 静岡県浜松市(旧細江町)(1981)
  • Wenatchee × 青森県三沢市(1981)
  • Edmonds × 愛知県碧南市(1988)
  • Pullman × 兵庫県加西市(1989)
  • Chehalis × 静岡県浜松市(旧引佐町)(1990)
  • Ferndale × 千葉県南房総市(1991)
  • Kittitas County × 兵庫県三田市(1992)
  • Sequim × 兵庫県宍粟市(旧山崎町)(1993)
  • Federal Way × 青森県八戸市(1993)
  • Kelso × 静岡県牧之原市(旧相良町)(1994)
  • Port Angeles × 青森県むつ市(1995)
  • Camas × 三重県多気町(1995)
  • Vancouver × 京都府城陽市(1995)
  • Anacortes × 秋田県にかほ市(旧象潟町)(1996)
  • Chelan × 兵庫県加東市(旧東条町)(1996)
  • Longview × 埼玉県和光市(1999)
  • East Wenatchee × 青森県三沢市(2001)
  • Lakewood × 沖縄県沖縄市(2002)
  • Port Townsend × 兵庫県市川町(2002)
  • Covington × 兵庫県たつの市(2015)
  • Grant County × 愛知県豊山町(2019)
  • Grant County × 愛知県小牧市(2019)
*情報は2026年6月現在のものです

 

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(ライトハウス編集部)